供養の旅
私は海外生活の経験が通算で15年ほどあるのですが、そのほとんどの10年近くをタイの島で過ごしました。
日本人が多く暮らすバンコクとは全く違う環境です。
例えば田舎の島特有のところで言うとまず
水、電気の供給が安定していない。
交通機関は無い。
物が(オブジェクトとして)少ない。
システム、というものがそもそも無いに等しい。
などがあげられるでしょうか。
これはどこの国においても田舎の島に行くと多かれ少なかれある不便さ。なのかもしれません。
しかしタイにはそれ以外に、ジャングルがすぐ近く。という特殊な点がありました。
タイの島がリゾート地として有名なのはその美しい自然ゆえなのですが、暮らすとなると色々と心構えが必要です。
ある時サムイ島で海の景色がとても素晴らしい丘の上の家に住んでいたのですが、庭にコブラがしょっちゅう出て本当に大変でした。
もちろん殺さなければこちらの命が危なくなります。
我が家ではピットブルテリアというとても強い犬を2匹飼っていたのですが、彼らはものすごい勢いで蛇と戦っていました。
本来は蛇が出た瞬間にすぐこの家は引き払うべきだったのですが、あまりにもジャングル生活が長くなっていたため痲痺していたのだと思います。なんとこの家には蛇が出た後もしばらく住んでいました。
我が家の愛犬が殺す度2メートルもある蛇を私が処理していました。そのままにしておくと爬虫類というのはものすごい匂いを発するのです。
処理した蛇は10匹以上でしょうか。今考えると異常です。
思い返すとなんでこんな危険な家に住んで入られたのでしょう…。
そして想定出来ることだと思うのですが…。
ある日とうとう愛する雄犬が相討ちとなり死んでしまいました。
朝起きるといつも寝ている格好でバルコニーで亡くなっていました…。側には死んだ蛇が転がっていました。
この子は長女が4歳の時から飼っていたのですが、まだ手のひらに乗る小ささの時から彼女と同じベッドで寝ることをこよなく愛し、彼女を姉のように慕っていた愛すべき家族でした。
その後もちろんこの家は引き払い蛇が絶対出ないビーチ沿いの家に移りましたが、かなり長い間娘から、なんであんな家に住んだんだ!と責められました。
実は今その長女と8年ぶりにサムイ島に来ています。ここに来てまず思ったのが愛犬の供養でした。
実は愛犬は死後、長女の布団に包み近所の山に葬りました。ですので彼はここの土地に返っているのです。
トロピカルアイランドで暮らすには相当のサバイバル力が無いと難しいです。
バケーションで人が人工的に作った心地良い環境の中自然を楽しむのとはわけが違うのです。自然との共存には自然を知りその中でどう自分自身が立ち振る舞うべきなのかの知識が必要不可欠です。
その知識がなく死なせてしまった愛犬のことを思うと申し訳なさでいっぱいです。
私は自然が大好きで、ジャングルにも暮らしていましたが、愛犬の死後からは
自分が暮らすべき地は自分が住みたい場所ではなく、自分が暮らすことの出来る場所だ。
と思うようになったのです。